「お母さん、夢がかなったね」ここに引っ越した時に一番小さな息子がうれしそうにいいました。「夢がかなったかな」とこたえながら、子供のとき、小さな甥や姪のために家に来てくれていた「産婆さん」のふっくらした手や丸い顔を想いだしていました。この人のようになりたいなあと思ったのは小学生の頃でした。

そして看護婦さんになってはじめて自分の人となりを意識し、とってもつらい20才代でした。酔いつぶれみじめな意識のままいつも励ましてくれた行きつけの「飲み屋のママ」。「ゆみちゃんはゆみちゃんのままでいいよ、すてきよ。元気出して」とささやいてくれました。この人は昔は保健婦さんだったということをお別れのときに聞きました。お酒が好きでここまで来たのよと笑っていました。

一生懸命働いたけど、どうしても勤務助産婦としてははみだしていました。「あなたは開業助産婦にむいてるヨ」励ましてくれたのは婦長さんでした。いろんなところに連れていってもらい、勉強させてもらいました。恩人です。

そして、とにもかくにも開業していろんな助産婦さんに会いました。「仕事あるヨ」と紹介してもらい「お勉強にいこう」とさそってもらいました。ありがたかった。私は少しずつ「自分でもやれるかもしれない」というところまで来ているかなあと思っています。本当に出会った皆様のおかげです。私は人に恵まれていました。

これからの仕事の中で、私はお母さんたちには「すてきよ。あなたはあなたでいいのよ。がんばったね」、赤ちゃんには「生きるっておもしろいよ、死ぬまで生きぬいてごらん」というメッセージを伝えたいと思います。「さんば」ってやっぱり天職だったかな。

今日は本当にありがとうございました。

平成9年5月吉日  齋藤弓子