お産の点数化で助産院は消えるのか?

正常分娩を含めて、産科医療を医療保険制度の中に組み込んでいくということが、2年後をめざして検討されています。出産に多額の費用がかかりすぎているということを問題にしているようですが、これは自然なお産の多くの時間が「見守り」に費やされる自然分娩が立ちいかなくなるかもしれないという問題を抱えています。

特に助産院に関しては世界の先行している国(インドネシア、韓国、etc.)を見ても、お産が医療保険制度に組み込まれた後は助産院が減少しているようです。昔、先輩の助産師さんから「出産証明書を書いたらお代をいただく」と聞いていたので、人間の誕生にかかわる仕事なので初産だろうが経産婦だろうが、早かろうが遅かろうが皆おなじ「お代」と割り切って仕事をしてきました。「点数化」全然馴染みません。

長い間、反対してきた日本産婦人科医会も賛成し、日本助産師会もお産の点数化は反対できなかったようです。先日、午後の時間、洗濯物をたたみながら何度目かの「チャングムの誓い」を見ていたら、夫が「お母さん、何してるの?チャングムなんか見てていいの?荒堀先生が頑張ってくれているのに!メール見た?返事した?」とプンプン怒ってきた。荒堀先生は「自然分娩推進協会」を立ち上げて「自然分娩が衰退する。助産院頑張れ」という行動をとっているお医者さんで、講演をしたり本を書いたりしている。お産の医療保険化に関して、助産院の自然分娩が継続できるように、いろいろアイデアを出してくれている。先日(9月30日)もオンライン会議で見たばかりだった。

昔見た「助産婦の戦後」という本には、戦後GHQの指示等で新制度に変わる時、私のような開業助産婦の先輩たちは日々の生活に忙しく、お産の件数もものすごく多くて、「どこの話?」みたいな感じで過ごしてしまったそうです。そのため開業助産婦の仕事を衰退させる一因になってしまったという記述がありました。現在の私の状態はそれに近いのかも。医女チャングムの我が身の命をも問わない姿勢などは爪の垢ほどもない。

昨日あったお産も、一昨日あったお産も、陣痛がイレギュラーで弱く、時間がかかった。それぞれの人の時間を見守り、過ごしていた。昨日のお産は子供たちが寝たところで「ガッ」と陣痛が強くなり、「暑い暑い」と寝巻きを脱ぎ、発作がくると微笑みながら体を開き、1時間で赤ちゃんを産んだ。赤ちゃんの血色も良く、笑っているように見えた。

一昨日のお産は、子宮口は柔らかく、どこまでも開いて来ているのに、赤ちゃんが全然降りてこない。座ってみたり立ってみたり、お風呂に入ったり…..。そうこうしているうちに破水!と共にポンと生まれた。詰まったものが出て来たようで、本人もすごい解放感があったらしい。…..こんなお産のどこを点数化するのか。もちろん時間ごとに心音を聴いたり、声かけ労ったりはしているけれど….???

湘南鎌倉バースクリニックの閉院問題もあり、ゼニカネがからまると事はいろいろ面倒でなんとも言えない。自然なお産が立ちいかなくならないか心配だ。

(齋藤弓子)

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